コンデンサーマイクについて

コンデンサーマイクの中でもボーカル録音やナレーション収録に多く用いられる"ラージダイアフラム"コンデンサーマイクについて、ご紹介致します。

なかでも本特集では「初めてのコンデンサーマイク」として手の届き易い価格帯のコンデンサーマイクを中心にピックアップしてみました。

何をどう選んだら良いのか

低価格帯のコンデンサーマイクと限定しても様々なメーカーから様々な機種が発売されています。何故、これだけのマイクがあるのかというと、それぞれにキャラクターがあるからです。マイクも楽器と同じように、好みや用途に合わせてお選び頂くものと考えております。例えばボーカルがスッキリ聞こえる抜けの良いマイク― ローがしっかりと入る中・低音系のマイク― などなど。レコーディングの現場では、ボーカリストや楽器の特性にあわせてマイクをチョイスしています。

低価格のマイクではキャラクターが強み・弱みがハッキリしている傾向にあり、「高音の抜け感は良いけど、低音がもう少し欲しいな、、、」「キャラクターは好みだけどノイズが残念」といった"欲を言えばこうだったらな~"という印象を受けることも。

キャラクターについては録った後にイコライザーで調整したらい良い、という考え方もありますが、ポイントが少ないに越したことはありません。ノイズについては原因が多岐に渡りますが、マイクの性能によるノイズであるケースもあります。特に無音時に目立つ"サー"といったホワイトノイズはマイクプリかマイクで発生していることがあります。昨今ではノイズ除去ソフトやノイズゲートも手軽になりましたが、音源に乗ってしまったノイズというのは除去出来ないので、マイクのS/Nは特に気を付けたいポイントです。

選び方も様々です

最初からキャラクターがどうとか言われても困る・・・という方もご安心を。万人受けするようなオールマイティなマイクを買っておく、という選択肢もありますね。

予算や見た目、あるいは好きなボーカリスト、ユーチューバーと同じマイクにしたい、という理由で最初の1本を買うというのもアリです。

メーカーで選ぶというのも良いですね、audio-technicaは全般的にフラットで味付けの無い、真面目な傾向にありますが、AKGは中・高音に特徴が有る"AKGらしいサウンド"という印象があります。

―色々書きましたが、とにかく、まずは最初の一本を手に入れることから、だと考えています。そこから、最初の1本を基準として考えて違うマイクが相対的にどのようなキャラクターを持っているのか、、経験を積むごとに見えてくるはずです。

マイクのキャラクターって?

前項では、マイクにはキャラクターがあると述べましたが、じゃあどこでそのキャラクターを知ることができるか?お困りの方も多いはず。

1つの参考データーとなるのが下記の周波数特性。マイクの仕様表を見ると良く見かけるグラフですね。


▲Audio-technica AT2020の例

横軸が周波数(音域)です。左が低音域で右にかけて高音域を示しています。縦軸は相対感度(音量)で、上にいくと感度が良いということなります。この表を見て、音質特性やメーカーがどのような狙いでマイクを設計しているのか読み解くことが出来ます。

表だけでは読み取れない部分も

それでは上記のグラフを見てマイクのキャラクターが完全に読み取れるかというと、そうではないと思います。

マイクをテストしてみると、異なる印象を受けることも。以前、業界標準のNUEMANN U87Aiと同じような特性と口コミになったコンデンサーマイクを試したことがありますが、聞こえ方は全く異なるものでした。

一番は試してみること

このようにマイクのキャラクターはグラフや仕様表の数値では中々読み解くことが難しい商品群となっております。

もし機会があるようならば、マイクを実際に試して特性を体感するのが一番です。

マイク選びのご参考に―マイクレビューをご用意

試してみることが一番、と書きましたが試聴対応の店舗が近くに無いという方も多いはず。そこで、当店では広島県福山市のライブハウス&レコーディングスタジオの「福山Cable」のエンジニア出原氏にサウンドチェックとデモ音源製作を依頼しました。

音源協力

イモトショウタ
福山市を拠点に活動中のシンガーソングライター。
ゲストボーカルとして参加しているKilonova 1st single 『サマーレンダ』各種サブスクリプションにて配信中。

レビュー協力

福山Cable
2010年、福山市初となる本格的な音響・照明を備えたライブハウスとしてオープン。
ライブハウスを軸に音楽文化発展を目指し下記業務を執り行う。
リハーサルスタジオ/レコーディングスタジオ/音響レンタル/イベントサポート

「いい音楽は、つづけられる」そして、
「より良い音を追求する」ライブハウス。

サウンドエンジニア 出原 亮
野外フェス『hoshioto』全面サポート。福山のライブハウス福山Cableのオーナー兼エンジニア。
サウンド構築のための、学生や一般を対象に各種セミナーやワークショップを主催。

テスト環境

男性Vo+トラックで検証
マイクは全て単一指向性、PAD/HPFは使わず、プリアンプでもEQ,Comp.HPFの使用なし
付属のホルダーも使わず下記で統一
MIC→SSL9000 MIC AMP→Apoggee Symphony→PC
マイクスタンド K&M201+マイクホルダー RYCOTE RY-INVUSM
(AT2020USB+のみ本体Pre+AD)

サンプル音源について:

音声レベルについてはプリアンプのゲイン固定にて録音。
全て同じ音量での歌い出しになるように、録音ファイルの歌い出し部分のラウドネスを測定し差分をDAWにて調整してから視聴。 EQ、Compは使わず同量でReverbを若干使用。
音源の最初の辺りは通常ミックス、後半部分でオケを小さくしています。マイクのホワイトノイズも分かるように0:24以降無音部分も残しています。
試聴方法について:
音声ファイルは"48kHz/24Bit"にて保存してあります。モニタースピーカーやモニターヘッドフォンでのご視聴をお勧め致します。再生環境(ヘッドフォンやスピーカー)により音の聞こえ方が変わることにご留意ください。
レビュー内容について:
本特集にはプロモーション広告は含まれておりません。フラットな立場での率直なレビューとなっております。また、レビュー内容は販売店で加筆せずに掲載しております。代わりにレビュー下部に販売店より営業的なコメントを追記しております。
価格については掲載時点の販売価格となります。リアルタイムでの更新を行っておらず、価格改定により実際の販売価格と異なる場合がございます。

比較機種

分布図

audio-technica AT2020

実売1万円前半でこの音質なら十分。最初の1本を普通な音で録りたい人向け。
ただし、太さや抜け感など特徴的な良いキャラクターも無い。
なので何かを狙ってというよりは、とりあえず無難に宅録をスタートしたい方は外しにくいチョイス。
高域が若干オープンなので、その辺りにキャラがある歌声や喋りの集音にはマッチしそう。

サンプル音源

福山楽器センター 音響機器販売担当者:

価格がリーズナブルでお求めになりやすいコンデンサーマイクです。(掲載時点の価格:10,780円) 通年で一番人気のマイクと言っても過言ではなく、私も最初の1本として購入したマイクで動画のナレーション収録等に使用中。音が真面目なので真面目な動画のナレーションに使用しています。付属のマウント金具にはサスペンション構造が無く、卓上スタンドを使用する場合パソコンのキータイプの振動も入りやすいです。良いテイクが録れたからといって、すぐにキーボードのキーを勢いよく押すと振動も一緒に入ってしまうのでご注意を(実体験)

audio-technica AT2050

今回試したオーディオテクニカのマイクの中では、音のポジション的に中間。
とりあえず録音を楽しみたい方へ。コレといったクセは少なめなので、ナチュラルな音像が好きな方向け。
双指向性や無指向性なども切り替え可能なので、指向性特徴の使い分け練習にはもってこい。

サンプル音源

福山楽器センター 音響機器販売担当者:

販売価格は掲載時点で"25,080円(10% 税込)"。AT2020と比べると結構な価格差ですが部類としてはエントリーユースにも人気のマイクです。指向性切り替えスイッチ付/ショックマウント標準付属

audio-technica AT2035

AT2020からの差分で言うと、低域の安定感がプラスされている。
ピッチ感を捉えやすいので、腰高なアコギのストロークも安定して録れそう。

宅録でアコギとボーカルを同じマイクでまかないたいと思う方や、落ち着いた声色が欲しい人は一考の価値あり。

サンプル音源

福山楽器センター 音響機器販売担当者:

販売価格は掲載時点で"16,280円(10% 税込)"。営業的にはショックマウントが標準付属するのが最大のPRポイント。AT2020との違いが僅差で悩まれる方が多いですね。価格差も絶妙です。。売れる数はAT2020の方が多いですが、後々AT2035にしておけば良かった・・・と後悔しないようにと少し高価なAT2035をお求め頂く方もいらっしゃいます。マイクの感度はAT2020より高いため、マイクプリの増幅量が少し物足りないようなオーディオインターフェイスとのご利用にはAT2035をお勧めしています。

audio-technica AT4040

前3機種と比べても下から上まで過不足なく集音できる。低域のダブつきも少なく、かといって細い訳ではないので安定感がある。超高域のディテールは今回試した中では一番扱いやすくじた。オールマイティーに、かつある程度のクオリティーでおさえたい方へ。落ち着いた声から、レンジのある声まで幅広く受け止めてくれると思います。

サンプル音源

福山楽器センター 音響機器販売担当者:

販売価格は掲載時点で32,780円(税込/10%)とそれほど高くないマイクですが、レコーディングスタジオや放送局でもご利用頂いているマイクです。AT40シリーズからはaudio-technicaでの品質管理基準がワンランク上がり、信頼性の高いラインナップとなります。

audio-technica AT4050

先の4040に更に中低域の要素を追加した感じ。プリによってはそこが邪魔になる可能性があるが倍音豊富なプリを合わせるととても良いと思う。VT737と4050の組み合わせが有名なのもうなずける。

サンプル音源

福山楽器センター 音響機器販売担当者:

販売価格は掲載時点で76,780円(税込/10%)、AT4050あいにく店頭デモ機を置いていないので、出原さん所有のマイクでのテストをして頂きました。

audio-technica AT2020USB+

部屋からの生配信をこれ1本で完結したい方は楽ちん。
しかし、他のインターフェースなどと組み合わせたりするのであれば、一気に使いにくくなる。
今回のAT2020とのテスト環境との差はかなりあるとは言え、内臓のPre,ADコンバーターは密度感が無い。
今後、宅録環境を充実させて行こうと思う方にはオススメしません。

サンプル音源

福山楽器センター 音響機器販売担当者:

販売価格は掲載時点で16,500円(税込/10%)、オーディオインターフェイスとAT2020を買うことを思えば大変リーズナブルな選択肢です。ボーカルやナレーション収録、音声通話のみのご使用といった風に用途が限定的で気軽に始めたいという方にお勧め。冒頭のUSBが付かないAT2020とApoggee Symphony(30万円)で録った音と比べると結構差が出てしまいましたが1万円ぐらいのオーディオインターフェイスとの比較になればまた違った印象になると思います。
オーディオインターフェイス内蔵のメリットとして、インターフェイスやケーブルの組み合わせによる音質差が生じにくいという点があります。とあるクラウド吹き替えサービスの録音用マイクにはAT2020USBPlusが指定されていたりします。
専用ドライバー無しで動作するため導入も簡単です。特にWindowsで使用する場合、ASIO非対応の動画編集ソフト等との組み合わせでは、あえてWindows標準ドライバで動作するAT2020USBPlusを選ぶケースもあります。
接続端子がUSBのみなのでオーディオインターフェイスやミキサーに接続出来ない為、マイクを2本にしたいという場面が出ると新たにマイクとインターフェイスを買う必要があります。USB端子で複数のマイクを繋いだとしても、配信ソフトや音声通話ソフトでは複数のデバイスを選択出来ないことが多いため、使用することができません。

TASCAM TM-80

1万円を切る価格にしては結構マトモな音。
ただ、他の上位マイクと比べると歪感が若干目立ったり、高域が録れててもダンピングがイマイチで滑舌が悪く聞こえる。

サンプル音源

福山楽器センター 音響機器販売担当者:

販売価格は掲載時点で7,920円(税込/10%)、リーズナブルな価格設定ながらショックマウントやマイクケーブルを同封。初めてのコンデンサーマイクに最適なパッケージとなっております。

BM-800

ハッキリ言って無し。マイクとしての性能が悪すぎる。一番気になるのはノイズ。ファンタムを入れた瞬間「サーーー」と壊れたのかと思った位。もし今使っている方がいらしゃいましたら直ぐに買い替えましょう(笑)

サンプル音源

福山楽器センター 音響機器販売担当者:

販売価格は約5,000円程(税込/10%)まずはサンプル音源をお聞きください。24秒以降、無音となりマイクのホワイトノイズが分かるような音源となっています。なぜ"ナシ"というレビューをそのまま掲載したかというと音源を聴いて、ご利用頂く方個人の体感レベルとしてノイズのレベルが許容範囲内であれば、それはそれで"アリ"だと思ったからです。 弊社ではこちらのマイクは主に個人でデモ音源を作ったり配信用のマイクとして形を整えたいというニーズにお勧めしています。
しかしながら、プロのエンジニアにミックス依頼したり、納品用のデータを収録するマイクとしては積極的にはお勧めしておりません。ノイズが入っているといくら良い音源であったとしても、どうにもならないのです。

LEWITT LCT 240 PRO

声に対しての食いつき方が良く、オケに対して前に来てくれる。無理せずとも抜けるので変にMIXの時いじらなくてもボリュームだけで完結できそう。
ロックな歌ものや音数の多い楽曲でとにかく声を前に置きたい方へ。ただし、マイクの指向性から外れると音色が一気に変わるので注意。

サンプル音源

福山楽器センター 音響機器販売担当者:

販売価格は20,166円(税込/10%)。これから新規で取り扱いを始めるマイクロフォンです。

一括聴き比べ


後半部分は

A・LTC240→プリ SSL9000MIC AMP/Apogee Symphony→PC
B・LTC240→プリ SERIES102i内蔵/AD→PC
C・LTC240→プリ SERIES 8p Dyna+AD→102iデジタル経由でPC

まとめ

以上、サンプル音源とサウンドレビューをお届け致しました。マイクの試聴・ご用命は(株)福山楽器センター までお願い致します。



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